後輪のタイヤがペタンコになったまま放置していたロードレーサーのタイヤを交換した。
一般的なタイヤは専門用語で「WOタイヤ」と呼ばれている。WOというのはワイヤード・オンの略で、タイヤの端っこの少し太くなっている部分(ここに入っているのは金属のワイヤー)を「リム」と呼ばれる車輪にはめ込んで装着するというものだ。ママチャリやMTBなど、普通のチャリンコはこれ。
ロードレーサーも、最近は高性能なタイヤが出てきているのでWOタイヤが主流になってきたのだが、僕が乗り始めた15年くらい前は「チューブラータイヤ」と呼ばれるタイヤが主流だった。チューブラーはタイヤの両端を縫い合わせて筒状にしたタイヤだ。もちろん中にはチューブが入っている。
筒状なので、専用のリムに「リムセメント」という接着剤で貼り付ける。接着剤と空気圧でリムに固定されているわけだ。
一般のタイヤが空気圧3〜4キロ圧なのに対して、7〜8キロ圧もの空気を入れるため筒状にする必要があったのだろうと想像する。
チューブラータイヤの幅は20ミリ前後。高い空気圧のため、接地面積は一口餃子の底くらい。ロードレーサーは餃子2個分の面積しか路面に接触していないことになる。そのため、転がり抵抗が少なくなり、走りも軽くなる。
さて、僕のレーサーだが、10年近く前に飛鳥山近くの柳澤さんにオーダーして作っていただいたものだ。細身のスチールチューブで組んでいただき、黒く塗装したカッコイイやつ。
最近は太めのタイヤで(とはいってもレーサーのタイヤなので限度がある)、空気圧を下げたソフトな乗り味を好むようになった。
そこでカワムラさんという、自転車のフランスパーツを輸入している会社の若社長にお願いしてデッドストックのタイヤを出してもらったのだが、古いものだから、空気を入れるバルブの根元が弱くて4本使ったうち3本が使えなくなった。「WOLBER」という今はないブランドのタイヤで、乗り心地はすばらしかったので残念だ。ゴム製品は新しいほうが安心できるということか。
車輪を外して部屋に持ち込んで、コステロを聴きながらタイヤ貼りをする。
まずは、リムのタイヤが付く面にリムセメントを塗り付ける。そして、タイヤのリムに触れる面にもセメントを薄く塗る。
少し乾かして、タイヤのバルブをリムのバルブ穴に差し込む。この時注意しなければならないのがタイヤの向き。タイヤの片面にはブランド名とモデル名が印刷している。このマークが車輪の右サイドに来るようにする。
逆に付けても性能に変わりはないのだが、自転車は右サイドに変速機やらクランクやチェーンリングなどが集まり、写真なども右から撮るようになっているのと関係があるのだろう。
ちなみにクランクの角度は、サドルが付くシートポストがささっているパイプ(シートチューブという)と一直線になるように、つまり右から見ると、時計の短針5時半くらいの角度がスタンダードなのだ。ややこしいけど。
話が激しく脱線してしまったが、リムのバルブ穴を上にして、バルブを刺したタイヤの両サイドをしっかり持って下方向に延ばしながらリムにはめ込んでいく。
下の方まで行ったら車輪を逆さにして、はまっていないタイヤを持ち上げながら完全にはめ込む。結構な力仕事だ。
タイヤをはめ込んだからといって、そのままでリムの中心に収まるわけがないので、タイヤが車輪の左右に均等に出るようにずらして調整していく。この時点でセメントは固まっていないので修正が効くのだ。
そして空気を入れて、車輪を回してみてタイヤのセンターが出ているのかをチェックする。ずれていればこの時に微調整をする。
という作業を2本分済ませてひと休みする。セメントが固まってくるまで数時間はガンガン乗れないのだ。固まらないうちに普通に乗ってブレーキを繰り返しかけていると、タイヤが前後方向にずれてきてバルブを傷めてしまう。
チューブラータイヤはこのように面倒で、交換してすぐに性能を発揮出来ないのが弱いところだ。交換して即ガンガン走ることが出来るWOタイヤが主流になってきたのもそういった要素があるのだろうと思う。
チューブラータイヤでパンクした場合はどうするか。普段走る時は、古いけどパンクしていないタイヤを畳んでサドルの下に縛り付けている。
パンクしたら、タイヤを剥がしてその古タイヤを装着して、フレームポンプ(フレームに取り付けている棒状の空気入れ)で空気を入れておしまい。
リムと古タイヤにはセメントが残っているので空気を入れるだけで走りはじめられる。そのかわり、しっかりと接着されていないので思い切り走ることはできないのだけど。
夕方、新しいタイヤが付いたレーサーに乗って“Poor house”にいった。新しいタイヤは滑らかに回って気持ちが良かった。
明日は久々にロードレーサーで通勤する予定。楽しみだ。
準備は万端
Fairground Attraction / Perfect